立て直せ、人生。

人生行き当たりばったりなアラサーが、無事にアラフィフになれるように頑張らないブログ

アニメ映画「ペンギン・ハイウェイ」のススメ(途中からネタバレありレビュー・考察)

かつてのぼくらの夏は、ほとんど永遠だった。 そのころ、世界は不思議で満ちていた。ぼくらは、少しずつその世界を齧って咀嚼し、理解を深めていったように思う。

「ねぇ、かつての少年。いま、きみは世界をどれだけ知って、どれだけ偉くなったんだい?」

ペンギン・ハイウェイをみた。これは、大変に良い映画だ。この映画は、お子さんにも観て頂きたい映画だし、「子供の頃」があった人にも観てもらいたい。 つまるところ、すべての全人類にみて頂きたい映画である。 平成最後の夏、子供の頃を思い出しながらみるのにうってつけだ。きっと、来年の今頃も、この映画を観たくなること請け合いである。

本エントリでは、途中までは非ネタバレレビューを、途中から視聴を前提とした感想と考察を述べる。けれど、少しでもこの映画に興味を持ってこのエントリを覗いてくれている人に言おう。

「全ての情報をシャットアウトして、映画館に行って欲しい」

何も知らないところから、手探りで研究を進める少年アオヤマ君。そんな彼の気持ちに少しでも近づけるよう、なるべく事前の情報を入れずに観て欲しい、そんな映画であるからだ。 鮮やかでファンタジックなこの作品は、今年の夏、大きなスクリーンで観るべき映画として強く推したい。

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あの頃、サンドイッチは「ハレ」の食べ物だった

朝、駅に電車が滑り込む。電車の中は驚くほど密度が高く、駅のホームに並ぶ人たちを詰め込む余地などないように思われるが、不思議と人々を詰め込み、ドアは閉じ、再び走り出す。

車内は身動きなど取れぬほどの圧迫感であるが、不気味なほど静かで、モーターの音、車輪とレールの擦れる音だけが聞こえてくる。

駅に降りると、疲れ切った顔の人々が降りて行き、めいめい自分の会社に向かって歩き出す。誰であったか、「電車は可逆圧縮ではない、不可逆圧縮だ。少しずつ磨耗してゆくのさ」と口にしたのは。

そんな色のない白黒の世界の中に、鮮やかな集団が目「留まり、僕は足を止める。

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父は死に、三十路を超えてぼくは生き、そして母はWRXを買った

20代最後の年、父は死に、実家のローンが無くなり、そして祖母のボケは進行し、母はWRXを買ってぼくは三十路となった。

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30歳になって変わったこととはあまりない、と感じるが、書き出してみると意外と移ろっている。久々会う友人に、「老けたな」と心の底からの本音を伝えると、「お前こそ」と返される。

年末、父が死んだ。20代最後の年に、喪主を担った。詳細は、別の機会に譲ろう。ただ、弟は「今日がプロポーブ記念日の予定だったのに」とぼやきながらアクセルを踏み込み、ロータリーエンジンは軽やかに吹き抜けた。葬儀当日、母は泣き、ぼくら兄弟は憑き物が落ちたかのような顔をしていた。久々に見る母は、ぼくの知る母より小さく、そして老けていた。

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