フミコフミオへのレクイエム、あるいは勝手ベストセレクション
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フミコフミオが死んだ。別名、 id:Delete_All 。2016年5月、春にしては暑く、じとつく空気がぼくらを取り巻いていた。
「ガラケーが壊れたんだ」
課長は嘯く。壊れたのはガラケーだけなのだろうか。違う。実際、フミコフミコは壊れていた。ロックを信奉していた課長は、トイレに閉じ込められるだけに飽き足らず、会社に、妻に、身動きが取れないようにがんじがらめにされていた。
そう、それは密室状態。たとえ、大草原にいてどこにだって物理的に歩いて出られる状態になっていたとしても、社会的に、立場的に身動きが取れないようになっていたら、それはある種の密室に他ならない*1。
正にロックだ。ロック以外の何物でもない。壊れたガラケーを片手に呆然と立ち尽くすフミコ課長の周りに、少女が立ち現れる。
あの課長に何をした?
あの課長に何をした?
フミコ課長は顔を上げる*2。
傷つけて、うれしかった。
傷つけて、たのしかった。
少女は部長の顔をしている。ケラケラと笑う。
「戦いは男の仕事」*3
水鉄砲で少女を撃った。少女は透けブラ少女となり空を翔る。けれど、その少女は確かに、あの部長の顔をしていた。
だから、あの子は僕を許さない。
僕も僕を許さない。心の痛みを知ったから。
フミコは考える。
だったら、何故、生きてるの?
「ただ会いたかったんだ、もう一度」*4。そんな言葉が喉元までこみ上げてくるが飲み込む。会いたくなんてなかった。今度会うときは客、と部長は言った。客は神、つまり試練を与える存在。そう、フミコフミオは009で学んできた。だから、戦うしかないと知っていた。負けると分かっていたって。
フミコは、何者かとの戦いに負けたのだろうか?それはわからない。ただ、厳然たる事実として、ブログは閉ざされた。フミコの意思はきっと固いのだろう、氏のあそこほどには。意思は石に音が通じ、文字どおりロックだ。だから、ぼくは捧ぐ。レクイエムを。レクイエムは鎮魂歌(ちんこんか)であり、どこか卑猥だからきっとフミコも喜んでくれるだろう。
記憶もまた、時間を経れば曖昧になり、空想と変わらなくなる。フミコがブログを書かなくなれば、フミコは皆の心の中から空想の世界に旅立ってしまう。それはネットにおいて死と同義ではないか。子供達が猫殺しのユゲを殺したように、ぼくたちはやがてフミコを殺してしまうのだ。望むと望まざるとに関わらず。
きっと、フミコは戻ってくるとぼくは無根拠に信じる。だって、ここはフミコにとってのヘブンだっただろうから。ぼくは、またフミコの文章が読みたいのだ。たとえ、疲れていても切羽詰まっていても構わない。そしてぼくはここで間違えて、誓う。いつか、フミコが生き返ってブログに戻ってきたとき、平民さんに写真を撮ってもらおうと。感動の再会に備えた、記念撮影の写真を。あの大きな像の、インディラの骨格標本を背にして。
(本エントリの本文は、アイフォーン6により32分かけて執筆された)