立て直せ、人生。

人生行き当たりばったりなアラサーが、無事にアラフィフになれるように頑張らないブログ

泣いた。アニメ「planetarian」の「ちいさなほしのゆめ(配信版)」と「星の人(劇場版)」

スポンサーリンク

廃墟が好きだ。かつて生きていたはずの建物が、街が、機械たちが、静かに眠りについている。建物は未だにその役割の何割か、あるいはほとんどの機能を有してそこに佇む。機械は、今すぐにでも動き出しそうな顔をして眠りについている。スイッチをひねり、明かりを灯してくれる人を待ち続けているよう。

時代の流れから取り残された過去そのものが、その場に居座っている。その様を見るのが、たまらなく哀しく、たまらなく愛おしい。

だから、ぼくはプラネタリアンを観て心を奪われた。

30年前、街からは人がいなくなった。宇宙開拓の破綻に端を発した世界大戦により、ほとんどの人間は死に絶えてしまっていた。

少女の姿をしたロボット「ほしのゆめみ」は、歩みを止めた「封印都市」の中、プラネタリウムに訪れる客を待ち続けた。眠りについた街の中、時から切り離されたプラネタリウムとロボット少女。

そんな彼女のもとに、1人の男が訪れる。廃墟の街から貴重なものを探し集めて売る「屑屋」であった。時から切り離された街での少女との出会いが、男をうごかす、小さな物語。

作品情報

本作品は、ネット配信で配信された「planetarian ~ちいさなほしのゆめ~」(通称:配信版)と、「planetarian ~星の人~」(劇場作品)とがある。 配信版は、dアニメストアやhulu、Netflixなど多くの各種配信サイトで提供されている。劇場版は、かなり上映館が少なく、本稿執筆時点で東京ではTOHOシネマズ新宿と、シネマサンシャイン池袋のみだ。

時系列的にはネット配信版ののち、劇場版となっているが、回想シーンにて配信版が再編集されて挿入されているため、劇場版だけでも楽しめる。

原作は、2004年発売のKeyのキネティックノベル。パソコンの紙芝居ゲームだ。ネット配信版は、このゲーム原作を基にして作成され、劇場版は短編小説集のうちの1編が基となっている。

原作ライターは、涼元悠一氏。CLANNADの「一ノ瀬ことみ」ルートの担当もしており、SFの知識に長けている*1。ぼくは、planetarian をプレイしたことがなかったが、CLANNADのことみルートが気に入ったため、本作品を観るに至った。配信版をdアニメストアですべて観たのち、劇場版を観に行った。

感想

画面の派手さはない。大きな盛り上がりはない。小さなロボット少女と無愛想な男が、プラネタリウムの施設の中でやり取りをするのが多くを占める。その部分については、劇場で観るには、正直退屈な部類に入ると思う。多少古くささを感じることも否めない。

けれど、どうしてかぼくは泣いてしまった。

www.youtube.com

ロボットの女の子は感情表現に富み、けれど世界が様変わりしてしまっていることを理解できず、30年前のあの頃のままの振る舞いをする。 男は感情表現に乏しく合理的、機械的に見える。 その二人の対比と、微妙な噛み合わないやりとり。それらが、たまらなく切なく感じる。

かつてあった輝かしくも優しい栄光との出会い。 人々から忘れ去られてしまった記憶と想い。少女は、それらそのものなのだ。

「天国をふたつに分けないでください」人間とロボットで、別々の天国に行ってしまうのだとしたら、それはとても悲しいことだから。

ロボットなのに、人間とロボットの幸せを願い続けた、心優しいロボット。そして、少女と触れたことで男は人生の選択を変えてゆく。 目的を持って生きることの強さ、夢を持つことの美しさが描かれるのみて、ぼくはこの二人が羨ましく感じた。

確かな想いは他の人たちに継がれ、世代を、時代を超えてゆく。

スタッフ、作画や撮影について

制作スタジオは、いまジョジョのテレビシリーズで有名なdavid production。ゴンゾからの独立組スタジオの一つだ。 監督は「妖狐x僕SS」(2012)で監督デビューした津田尚克氏。元鍵っ子だという。 作画は、正直波がある。劇場版アニメとしては、いま少し……と感じてしまう。

しかし、力の入れどころと抜きどころはキチッとしていて、ここぞというところはキメてくるので不安定感はない。また、アクション作監を入れていたりして、動きがあるシーンをキッチリ仕上げてくる辺りにも好感が持てる。

また、特筆すべきは背景の美しさ、そして撮影処理*2だ。劇場スクリーンで映える、美しい廃墟の背景画。そこに透明感あるエフェクト処理が施され、見惚れてしまうほどの出来栄えとなっている。また、3DCGのさりげない使いこなし、馴染ませ具合は、さすがゴンゾの血を引くスタジオといったところか。

楽曲

劇場の音響環境で聴くKeyの楽曲は、本当に素晴らしい。透き通るようなLiaさんの歌声が、劇場の音響で聴けるのは、本当に幸せだ。

CDは本稿執筆時点で、配信版の楽曲が発売、劇場版の楽曲は遅れて9月21日発売とのこと。劇場版サントラは発売日未定。BDは、配信版のみ発売が決定されており、9月28日発売とのこと。近頃この手のアニメは同時発売が多かったりするので、ちょっと拍子抜けである。

星の舟/Gentle Jena

星の舟/Gentle Jena

Twinkle Starlight/Worlds Pain

Twinkle Starlight/Worlds Pain

さいごに

大作アニメ映画と比べると、地味で映えない作品であるのは確かだ。けれど、丁寧に愛を込められて作られている作品であることは、一度観てもらえればわかると思う。

2004に作られて12年の時を経て映像化された本作品。それだけ長い間愛され続けた魅力は、是非ともスクリーンで目撃してほしい。

「planetarian~ちいさなほしのゆめ~」 [Blu-ray]

「planetarian~ちいさなほしのゆめ~」 [Blu-ray]

*1:「おとといは兎をみたの。昨日は鹿、今日はあなた。」という台詞が、CLANNADことみルートに出てくる。これは、ロバートFヤングの名作短編「たんぽぽ娘」の一節。ビブリア古書堂でも登場する作品だ

*2:セル時代からの流れで、PC上での彩色、エフェクト処理も「撮影」と呼ぶ