立て直せ、人生。

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土木はアートだ。「土木展」で美しい土木に触れる

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土木、って地味だ。

だけれど、無くてはならず、そしてふと立ち止まって土木によって生まれた構造物を見上げてみると、その美しさにしばし目を奪われたりする。

街だって建物だって、使いやすく美しく、そして調和するように誰かがデザインしている。それは、成長をし続ける、完成をみることのない美術品のようなものだ。

現在、六本木ミッドタウン内にある「21_21 DESIGN SIGHT」で開催中の「土木展」は、そんな当たり前のようでなかなか気づかないことを、ぼくに教えてくれた。

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この写真の構造物は、2013年時点での渋谷駅を表したものだという *1。 普段、何気無く使っている構造物たちが、それを抜き出して別の形でみてみると、息を呑むほど美しい。そんなことをこの展示たちは教えてくれる。

街に対する視点を変えてみる

土木展で真っ先に迎えてくれるのは、 建築家、田中智之氏による街を透視したレントゲンのような絵だ。

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背丈以上にあるおおきな絵は、まるでコンピュータグラフィックのように正確に街を描き出しているが、なんとコンピュータモデリングは利用していないという*2。透視された街は、なぜだか妙に艶かしくみえてしまうのは、ぼくだけだろうか。

また、透視された街にも顔がある。東京駅周辺(上記写真)は驚くほど整っていて、少々おとなしく見えてしまうが、一方で新宿駅(下記写真)は、元気いっぱいで、ともすれば少々まとまりのないとも言える。

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街をこうして透視してみると、それまで覆い隠されてきた様々な関係がつまびらかになり、受ける印象や気づくものも違ってくる。 大きなパネルに寄ってみて仔細にみてみたり、数歩下がって全景をみてみたり。ちょっとだけ特別な力を手にいれたような気分になって、愉快だ。

土木のオーケストラ

だいたい土木って、騒音がひどくて耐えられないよ。 そりゃそうだ。秩序なく、ガンガンギリギリと鳴り響く音は、誰だって不愉快だ。

けど、そんな音をオーケストラにしてしまうってのはどうだろうか。 それは、きっと面白い。そんなアイデアを、実際にやってしまったのが、「土木オーケストラ」 *3だ。

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トラック、溶接、その他様々な建築現場の音が再構築され、ラヴェルの「ボレロ」を奏でる。3面には土木工事の映像が音楽にあわせて映し出される。高度経済成長期の様子、いま行っている渋谷駅周辺再開発の様子。土木と対局にあるように思えるクラシック。その「ありえない組み合わせ」が、だけれど美しく、作品のなかへと沈みこんでゆく錯覚にとらわれる。

ぼくは気に入って、2周もこの映像を観てしまった。次のリンク先では、製作時のことが紹介されている。

www.2121designsight.jp

土木展そのものの魅力

21_21 DESIGN SIGHTは小さな建物だ。展示場も、さして広くはない。

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けれど、そんな中で精一杯魅力的な展示が行われ、体験できる。アートって、だいたいにおいて触ることがかなわないけれど、この展覧会では触れることができるものが多い。

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例えば、これは「版築」を触ることができる展示だ。「版築」とは、土を突き固めて建物の基礎や土壁を作るものだ。左官さんがやる、あれ。そういえば、鉄腕DASHでもやってたような気がする。

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他にも、アーチを作ってみる体験もある。何か接着するようなものでくっつける訳でもないけど、アーチができるのだという。ただ、これちょっとお一人様でやるには様々な意味で厳しいものがある。ぜひ、このアーチを作ってくれるのを付き合ってくれるという乙女な方がいらっしゃいましたら、ぼくまでご連絡いただきたい。

そういえば、アーチも鉄腕DASHでやっていたような……。

体験してみないとわからない

紹介記事を書いておきながら、やっぱり「これは現地で体感してもらうしかないなぁ」って思ったりする。 写真撮影可、っていうのも納得だ。

カレーダムの展示も、モニターで映像が流れていて「やはりカレーに使うのは、表現したいダムの現地の水を使うのが一番です」とか真剣な顔で言っているので、「なにいってんだ」って思わず笑ってしまう*4

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っていうか「日本ダムカレー協会」ってなんだよ!なんでこんなに日本でダムカレーが増えてるんだよ!なにそれ、意味わかんない!テトラポットのぬいぐるみを越えてくくらい意味わかんないよ!(そして当然の顔をして「テトぐるみ」はお土産コーナーに並んでいる)

ぐぐってみると、いくつも動画が上がっているのだけれど、有名なんだろうか。無駄に凝ってて面白い。ミッドタウン内で食べられるよ!とのことであったが、さすがに一人だとなあ、と食べずに帰ってきてしまった。うう、ちょっと後悔。

www.youtube.com

他にも、美しい写真、体験型の土木っぽい出し物。なんだか結構自由で、ずっとその場にいて眺めていたい気分になる。

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土木写真家の西山芳一氏の写真は美しく迫力があり、そして艶かしい

さいごに

会期終了間近で存在を知り、急いで向かったこの展覧会。こんな素晴らしい展覧会に出会えたのは幸せだ。会場の中では、興奮してしまって「すばらしい」「うつくしい」とぼそぼそ呟きながら、フンフン鼻息荒くして会場をぐるぐる回りつづけていた。

建築物や工業製品の美術展、ぼくが知らないだけかもしれないけれど、もっと増えて、もっといろんな人に参加してもらえると嬉しいなあって思う。実はぼくたちは、気づいていないだけで、美術品の中で日々生活をしているかもしれない。そんな風に考えると、毎日がちょっとだけ楽しくなる。

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展覧会情報

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  • 会期 2016/06/24(金)〜09/25(日)
  • 会場 「21_21 DESIGN SIGHT」(東京ミッドタウン ガーデン内)
  • 最寄り駅 都営大江戸線・東京メトロ日比谷線「六本木」駅 / 千代田線「乃木坂」(徒歩5分)
  • 定休日 火曜日
  • 料金 一般1,100円 大学生800円 高校生500円 中学生以下無料
  • 営業時間 10:00 - 19:00(入館時間は18:30まで)

*1:「つなぐ:渋谷駅(2013)構内模型」田村圭介(建築家)+昭和女子大学環境デザイン学科 田村研究室

*2:http://wired.jp/2016/08/08/tomoyuki-tanaka/

*3:ドローイングアンドマニュアル株式会社

*4:展示名は「ダムとカレーと私」ダムカレー開発者の宮島咲さんの映像がシュール