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コンピュータで「知能」は作れる!人工知能入門

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AIとVR組み合わせれば、非モテも救われるんじゃね?

人工知能にも意識があるだろ、選ぶ権利があるんでは

そんな会話をしていてふと思う。人工知能って流行っているけど、これって発達すると、人間みたいに考えたり、悲しんだり、恋したりできるんだろうか。

「ちょびっツ」アニメから16年。人工知能については今大変に盛り上がりを見せている。オセロをしたり猫画像を見分けたり、絵を描いたり作曲をしたり。しかし、いまいち人間っぽさは感じない。

そんな人工知能、AIは人間になれるんだろうか。人間を、越えられるのだろうか?

ぼくはできると考えている。

本エントリでは、「コンピュータで脳は作れるか」(通称かずー氏(id:kazoo04)本)を読んだことをきっかけにして書かれた。レビューとは少し逸れる内容になるが、人工知能に関して全くの素人の人間が「人工知能について齧ってみた」結果学んだことをまとめる。

人間のようになれる「人工知能(AI)」はまだできていない

人間より強いチェスや画像認識のプログラムは話題になるけれども、 自ら学習して新しい能力を習得してゆく ような人工知能はできていない。 かずー氏は、これらの人工知能、AIの区別に、「特化型AI」と「汎用AI」という言葉を使っている。

特化型AIは、チェスや画像認識、音声認識、明日の株価やを予想したりする。これらは既に実用化されているものだ。 一方で、汎用AIは人間のようなAI、「心を持った人工知能」と言える。

人工知能はできる

「人工知能ができないわけがない」

人工知能の第一人者、松尾豊氏 *1 の言葉を借りる。

ぼくもこの言葉には賛成だ。脳はシナプスから成る電気回路であり、電気が行き交う計算を行なっている。学習すると、この電気回路が変化する。

計算可能であれば、コンピュータで演算できる。これは、現代のコンピュータ理論の礎となっているチューリングマシンの概念だ *2

脳は、アーキテクチャ(構造)の違うコンピュータ計算機である。その機能とアルゴリズム(計算方法)を解明してコンピュータで計算してやれば、人工的な知能は可能だろう。

今回紹介する「コンピュータで脳ができるか?」という本では、現代出てきている人工知能のアルゴリズムが、脳のどの部分、どういった機能と対応するのか?というのを、やさしく教えてくれる。

なお、この辺りの議論では、「強いAIと弱いAI」 *3 という用語がある。 人工知能の研究をしてゆけばコンピュータが心を持つ のか(strong AI)、あるいは 心の研究にコンピュータを道具として使う のか(weak AI)、というものだ。 心を持つ汎用人工知能の研究は、「強いAI」としての研究、画像処理など特化型人工知能の研究は「弱いAI」としての研究といえるだろう。

脳の構造と現在の人工知能研究

人間の心は脳で作られる。とするならば、脳の仕組みが分かり、その機能をそれぞれコンピュータで再現できれば、心を持ったAIが作れるのではないか。

現在もりあがる機械学習とは、「コンピュータプログラムが、経験によって自動的に改善していく」技術だ。 機械学習は人工知能の一分野であり、また人工知能を実現するためのアプローチの一つである。

かずー氏は、人工知能を実現するために、脳の機能を解説し、機械学習の種類「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」との対応付けを行った。

教師あり学習

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「教師あり学習」では、答えのあるデータ群から、そのルールを見つけ出す。

例えば、「犬の画像」と「これは犬である」という情報を沢山与えて学習させる。何千枚何万枚という情報を用意する。 そうすると、「尖った耳と突きだしたが鼻があって、4つ足の動物は犬なんじゃないか。あともふいヤツ」という抽象的な共通点を学び取ることができる。

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多少毛がなかったり、大きさが違っていたり、耳が折れていたりしても、見分けが付くような「犬っぽさ」を抽象的に学ぶことができれば、「こいつぁ犬だ」と学ぶことができる。

「これ人間が教えりゃいいじゃん、わざわざ機械に勉強させんでも」と思う人がいるかもしれない。鋭い。 教えるデータを沢山用意するのも大変だし、人間が「犬の見分け方」を教えれば効率的なのではないか。

確かにその通りであるが、これも結局人間のスキルに依存する職人芸になってしまう。犬を教えられても猫は?じゃあ象は? だから、なるべく機械にやらせられるようにすれば良い。

答えがあるデータっていうのを作り出すのがまた大変だったりするけど、今はWeb上にタグ付けされたデータが沢山ある。 Instagramだったり、Blogのテキストだったり。そういう整理されたデータを組み合わせて沢山の「正解付きデータ」を作り出すことが可能になってきている。

教師なし学習

「教師なし学習」では、沢山の情報の中からルールを見つけ出す。答えとはセットになっていないから、教師なし学習。

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例えば、売り上げ情報の中から「冬になったら鍋が売れる!」だとか、「夏になったらタオルが売れる!」だとか。 当たり前の情報じゃん、って思われるかも知れないけど、その中から意外なルールが見つけられるかもしれない。 そのルールをうまく活用できるようになれば、より効率的に売り上げが伸ばすことができる。

教師なし学習では、正解データを用意する必要がない。日常生活や自然界の中でも、教師付データというものはないのが実情だ。 だから、ルールを自分で見つけてゆくこの手法は、人工知能に非常に重要だ。

強化学習

上記二つの他にもう一つの手法として「強化学習」がある。

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これは、試行錯誤を行って環境を適応するものだ。 教師あり学習とは違い、明示的な答えは与えられない。その代わり、行動に対して「報酬」を与えることにより、採るべき行動を学んでゆく。

例えばゲームだったら「勝った」という事実が報酬だ。

具体的にどうやってそれ機械で実現するのさ?という疑問を持つことだろうと思う。 多くのアルゴリズムは、次のような流れを採る。

  1. 何をしたら良いか分からんので、完全にランダムに動いてみる
  2. 報酬*4が与えられたら 「どんなとき」「なにをしたら」良いことがあった!と記憶する
  3. ランダムには動くけど、良いことがあった情報を元にした行動も採ってみる
  4. 良さそうな行動を採ってみて、予想通り良いことがあったら、 また「どんなとき」「なにをしたら」よいことがあった!を覚えておく (または、その時の記憶を強化する)

だろう。

こう書いてみると、ずいぶんと動物くさい。ラットの実験などで「餌を貰えるボタンの学習」などを思い出す。

機械学習の手法と脳

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さて、これまでの機械学習は脳のどの場所と結びつくのだろうか。

脳の部位をおおまかにまとめると、次のようになる。

  • 小脳
    • 意識をせずに行動を取れるような「身体で覚える系」
    • 始め意識をしていた事が、段々意識しなくてもできるようになる
    • 入力情報と出力情報を沢山小脳がチェックして、最終的に小脳だけで処理できるようになる
  • 大脳基底核
    • いやなことはやらない、すきなことはやる
    • やって嬉しいことが起きたらまたやろう!
  • 大脳新皮質
    • あまりよく分かっていない
    • みる、聞く、話す、計画するなどを行う
    • 正解がない高度で抽象的な概念を司る

これらを眺めてみると、それぞれ機械学習の手法にマッピングできそうだ。 ということで、それぞれマッピングしてみると、次の通りとなるだろう。

部位 手法
小脳 教師あり学習
大脳基底核 強化学習
大脳新皮質 教師なし学習

こうやって脳の解明が進んで、部分的にコンピュータでまねる研究が進んで行くと、 やはり人間のような人工知能だって夢じゃなさそうだってぼくは思う。

かずー氏本「コンピュータで脳は作れるか」について

端的に言って名著である。

数式もプログラミングもでてこず、平易に書かれており中学生だって読み通せるような内容であるのに、情報がぎっしり詰まっている。 たった2時間この本を読み通すだけで、人工知能の現状とこれからについての概要を掴むことができる。 脳の構造から入り、現在のAI分類と脳の役割とのマッピングの話を通り抜けて、現在と今後の展望を示す。 概要をものすごい勢いでわかりやすく解説する、「超速インストール 人工知能」である。

入門書としては最適で、注釈も充実しており、深く知りたくなったらその先の参考文献を読めばいい。 そうして、またこの本に戻ってくると、次に深く知るべき内容が見えてくる。

構成も大変美しい。「何故人間に難しい計算が解けるのに、簡単な歩く走るが機械にはできないの?」 といったような疑問を読者に持たせるように仕向けた上で、読者が知識を付けてきたタイミングで 「こういう理由だからだよ」ときちんと答えを示してくれる。 読書をしているのに、筆者とのコミュニケーションが発生しているかのような、小気味よいリズムで本は進み、 読んでいて非常に心地良い。

そのほか参考書籍

「人工知能は人間を超えるか」

かずー氏本の次に読むと良い本。 入門本ではあるが、かずー氏本よりももう一歩技術的に踏み込んで具体的な話をする。

ディープラーニングにより、これまで職人芸だった特徴量抽出ができるようになったことが、どれだけブレークスルーたり得るのか?が熱く語られている。

なお、筆者の松尾豊氏は、東京大学准教授、人工知能学会の編集長も務める。人工知能の第一人者である。

オンラインで読める参考文献

さいごに

非常に知的好奇心をくすぐられるジャンルであった。

そのほかにもいくつか読みたい本が出てきて、現在順番にゆっくりと読んでいる最中である。 色々と科学が発達しているけれど、人間の心っていうものが未だ謎に包まれているのは興味深いことだ。

シンギュラリティ、技術的特異点という概念がある。人工知能におけるシンギュラリティは、人工知能が生まれ、 もし人工知能が自分をわずかでも上回る性能の人工知能をつくることができるようになったとしたら。 その再生産を無限大に繰り返すことにより、人間をはるかに超える高みへと到達するだろう。

そんなことを想像するのが大変に楽しい。そんなことが起きたらどのように社会が変わるのだろうか。人類への福音なのだろうか。それとも、破滅の始まりなのだろうか。 ぼくはきっと福音なのだろうと思う。だから、シンギュラリティをむかえ、世の中がガラリと変わる瞬間を目撃したいと願う。

*1:東京大学准教授、人工知能学会編集長(2012〜2014)、現同学会倫理委員長

*2:無限大の計算能力を持つチューリングマシンを万能チューリングマシンと呼ぶ。現代のコンピュータはノイマン型と呼ばれるものになるが、ノイマン型では、このチューリングマシンの概念を可能な限り模倣する。例えば、チューリングマシンは無限大のテープなどといった概念がでてくるが、ノイマン型では無限ではないが、必要に応じて追加する

*3:この概念は哲学者Searle, John. Rの論文「MINDS, BRAINS, AND PROGRAMS(pdf)」このこのエントリが参考になる。

*4:実際の報酬は報酬ポイントを加算することだったりする