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押井守流 異世界ファンタジー映画「ガルム・ウォーズ」の感想

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どんなコッテコテの押井映画が出てくるのだろう?と不安半分、期待半分で映画館に向かった。結果として、いまいち作品を楽しみきれず、物足りなさを感じた。

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地球ではない惑星「アンヌン」。創造主「ダナン」が創りしその世界では、役割ごとに部族にわかれ、創造主に仕えた。しかし創造主は去り、争いがうまれる。「ガルム」と呼ばれる戦士たちは部族間で覇権を争い、戦い続けた。

ガルムたちは、生殖しない。クローン技術により世代を重ね、生き続ける。命を落としても、記憶を新しい身体へと転写して生き延びるのだ。

「初めての記憶はある?」

異なる部族、敵同士のガルムたち4人。そんなガルム達は自分たちの過去を知るため、未来を掴むために伝説の地を目指す。その先に待ち受けるものは、希望か、絶望か——。

この作品は全編カナダで撮影され、2014年に「Garm Wars: The Last Druid」というタイトルで公開された。そして2016年5月に日本語版が公開。日本語版の作成にあたっては、ジブリの鈴木プロデューサーと、ニトロプラスの虚淵玄(まどか☆マギカ、Fate/Zero)の協力があったとのこと。

「ガルム戦記」から「ガルム・ウォーズ」へ

「ガルム・ウォーズ」が少なからず話題になっているのは、かつてバンダイで進んでいた、巨大映像プロジェクト「デジタルエンジンプロジェクト」で凍結されたプロジェクトが元になっているからだ。当時は「G.R.M」「ガルム戦記」として制作が進んでいた。

デジタルエンジンプロジェクトは、大友克洋の「スチームボーイ(2004)」や、りんたろうの「メトロポリス(2001)」を産みだしたプロジェクトだ。どちらも潤沢な資金と制作期間で大作として送り出されたが、この作品の企画は凍結されてしまう。総指揮にジェームズキャメロンを迎え、60億円とも言われたその規模と、セガとバンダイの合併騒動が背景にあると言われる。

ちなみに、「アヴァロン」は、この企画の派生として作られたとのことである。また、「アサルトガールズ」は、この「アヴァロン」とオムニバス映画「真・女立喰師列伝」の一編「ASSULT GIRL ケンタッキーの日菜子」の基本設定を融合させて作られたものである。

うむ、ヤヤコシイ。

「ガルム・ウォーズ」ネタバレ感想・批判

作品の物語について

率直に言うと、何とも中途半端で消化不良という印象。

争いで荒廃した世界の中で、敵同士だった者たちが、真実を求めて手を取り合う。そして真実を知り、止まっていた世界の時間が動き出す。それは滅びゆく時の流れだった。そして新たな戦いの時代が幕をあける。

物語のイントロダクション部分を長く見せられて、そろそろ盛り上がってきたかな?と思ったところで終わる。とても勿体ない。

また、語りすぎているのが押井作品らしくない。個人的には、思わせぶりな押井節が魅力的と感じている。「天使のたまご」は眠たくなるけど、あの神話的な世界観を描くには本当に効果的で「これはこういう事かしら?」と想像を巡らせるのが楽しい。一度観終えてからが本番で、2度3度と観て答え合わせをしたくなる。

その観点からいうと、今回の作品はそういう中毒性というか、ひっかかりポイントがあまりない。ナレーションで世界感を丁寧に説明してくれるし、世界の真実とやらも、長台詞で丁寧に説明してくれる。「押井作品なんだけど押井っぽくない」と感じてしまう、物足りなさはここだ。

作品の流れそのものもイマイチだ。「アヴァロン」はストーリーが進むにつれ徐々に世界観が提示され、最後に現実世界と虚構を入れ替える面白い仕掛けがあった。

今回の作品では「こういう世界なんですよ」ってナレーションが教えてくれるが、それを映像で観たいのだ。「真実を知りたい!」「俺たちの未来を!」とキャラクターたちが言い出しても、言葉の上だけでしか語られていないから、観客側にその想いが伝わってこない。

世界感の広がりが映像で提示されていないからなのか、どうにも世界が狭いような、箱庭的な印象が拭えない。

作品の映像について

こちらも「アヴァロン」の方が質感があった。アニメと実写の融合というコンセプトであったが、現実感のないふわっとした、靄のかかった絵作りとスローモーションを時折挟む映像は、CGと実写の質感のちがいをうまく馴染ませていて、15年経った今でも見劣りはしない。

それが今回、退化してしまっている。

CGに、もやっとしたエフェクトを掛けて馴染ませようとしているのはアヴァロンと同じ。同じだが、実写部分が悲しいほど浮いてる。そもそものCGに、チープ感溢れる。

致命的なのが、カットごとのクオリティの差だ。戦車みたいな乗り物は、CGでの戦闘シーンは重量感あり説得力がある。一方、別のカットでセットを用いて撮られただろうカットは戦車が安っぽく、同じ物なんだよね……と不安になる。

また、カラーマネジメントがいまいち。色合いがカットごとに違うのはいいんだけど、うまく演出的にマッチしていないのかコントロールできていないのか、「これ同じ場所だよね……?」と不安になる。

さいごに

小物や映像処理など、端々から感じるチープ感は、「アサルトガールズ」みたいな、肩の力を抜いて作ったB級作品であったら、良いのかも知れない。けれど、こういう「真面目な押井」作品においては致命的じゃないのかなあと感じる。

実写の素材をCGでアニメさせた「立喰師列伝」の「スーパーライヴメーション」の方が、映像的には見所があったのではと個人的には感じている。

戦闘シーンは派手で迫力あるし、音響も素晴らしいし、押井作品にしては分かりやすい。けれど、特徴的な点が何も無いという、悲しい印象。小説版を読むと、また違った視点を得られるのだろうか。

GARM WARS 白銀の審問艦

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