立て直せ、人生。

人生行き当たりばったりなアラサーが、無事にアラフィフになれるように頑張らないブログ

ぼくの喋りはオタっぽいし、話題を持っていてもコミュ障になる

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「え、っていうか趣味多いじゃん、彼女ぐらいすぐできるっしょ」

だとかなんだとか、そういう「気遣い」ってのが出来ないやつとはぼくは話したくないし、そんなことを言った瞬間、ぼくは手元のハイボールを相手にぶっかけそうになった。 危ない。中ジョッキ追加。

同僚との他愛ない飲み

秋、寒いなか、同僚が出張から帰ってきた。ぼくが押しつけてしまった仕事のために、彼はヒーヒー言いながら仕事をしていた。ごめん、ごめんよ。精神的にお返しします *1、ということで立ち飲み屋に入った。「おごってくれるんだよね」「何言ってんだ、飲み屋に誘う、これで精神的なお返しとなるんだ」二人中ジョッキ注文。

納豆豆腐揚げだとかなんだとか、意味の分からないものを頼んで「豆と豆じゃん」などとゲラゲラ笑って飲み進める。と、同僚は恋沙汰について話し出す。

「彼女と別れてん」「あーわかるわかる。それな。ウケる。神」とりあえず、近頃の若者の「わかり手 *2」 っぽく共感を示す。コミュ力が高い人はみんなそう言っている。すると、ぼくはビールをぶっかけられそうになるので、慌てて飲み干してハイボール(ダブル)を頼んだ。

女友達と遊んだって、女の子との話し方は分からない

「でさ、ちょうず、お前男ばっかりと遊んでんのか」「男を選んで遊んでるんじゃない、遊んだ相手がたまたま男だっただけだ」「どっちにしろダメだろそれ」「でもさ、異性と遊ぶことが目的じゃないでしょ、楽しいから異性と遊びたいんじゃないの」しらんけど。ぼくはハイボールを呷る。

「え、じゃあお前女友達いないの?」「急にマジな感じで言うなよ気楽に行こうぜTake it easy.」「Do Your Bestだろ*3」「Do Do Do My Bestでいつも心駆けてきたけど」「……何ソレ」「舞乙っていうアニメのEDの一節」→同僚大きなため息。どっちゃん、と後ろのおっさんがジョッキを落として割れて飛び散る。同僚は悲しそうな顔で、割れたジョッキとぼくの顔を見る。

「いや、っていうか真面目に女友達くらいはいる」「何人とは聞かないけど、で、それだったら女の子との話し方分かるでしょ」「何ソレ突然だな、女の子の話し方がどうとかって」「だって、お前新しく配属されてきた女の子の歓迎会、隣の席だってんのに借りてきた猫みたいに静かになってたじゃん」つまんでいた枝豆がぴゅるっと飛び出し、綺麗な放物線を描いて床に落ちる。店員さんに踏みつぶされる。

「……別に?んなことないって」「でも全然話してなかったろ。っていうか話す話題が見つからなかったんだろ。話し方が分からなかったんだろ」「るさい畳みかけるな、話すネタなら沢山持っている」つもりだ。

話すネタは沢山ある、つもりなんだけど

趣味については、割と多い方だと思っている。飛び抜けて何かに没頭するわけではないけど、美術館に行ってみたり、アニメを観てみたり、オールナイトショーに行ってみたり、イベントに行ってみたり、珍しいものを食べに車で片道4時間掛けたり。話すネタには困らないし、スマホのなかにはそんなときの写真が一杯詰まってる。

「じゃあなんで話さないんだ」「……普通の女の子との話し方がよくわからん」「はぁ?」

そうなのだった。分からないのだ。一緒に遊びに行ったりお茶をしばく相手は、女の子だけどちょっとばかし変わっていた。例えば、一緒に美術感に行ったら密教の系譜ついて解説をしはじめてくれる人だったり、夢野久作の作品の異常性とその魅力について考察を交わす相手だったり。オタクの女の子もいたが、「輪るピングドラム」から、「銀河鉄道の夜」の改稿による原稿の違いの差異について話合う相手だったり。あとは、小説書いてる腐女子とか。まあだいたいそんなものだった。

「なんでそんなピーキーな相手ばかり……探してもみつからんだろ」「男友達も似たようなモンだし、何かボロいスターレット車買って、エボより早くする!つって改造しまくってる人とか」「類友?*4」「ぼくはまだ普通だ」「普通の人は普通だなんて自称しないもんだ」友人はジョッキを空にした。

「普通の人」のコミュニケーションとの違いに驚く

先日、客層がかなり若いバーに入って、同世代の女性とLINEを交換した。そして驚いた。話題の拾い方についてだ。

「3連休何やってるの?」「店で餃子食ってたりした(画像)」「凄い美味しそう!」

「どこで食べてたの」「ここ」「昔ここで〜してたんだ!」

「なんでそこ行ったの?」「友人が近くに勤めてたから」「そうなんだ!私も昔その辺りに通ってたよ」

……etc.なんでも拾ってくるし、ぽんぽんぽんと進む。ああ、LINEってこう使うんだ。もの凄い長文でアニメや小説の感想を送ったり、「飲むぞ」「何時どこ」「未定東京駅集合」とか雑なやりとりをするための物じゃないんだ。

話し方が分からないのは、女の子とだけじゃなくね?

そして気づく。ぼくは、女の子との話し方がわからないんじゃない。一般の人との話し方が分からないんだ。 普通は映画の話をしていて、カメラワークの暗喩について考察を述べたりしないし、アニメを観ていて戦闘シーンのカットを担当していたアニメーターが誰だったか?について議論をしようとしたりしない。

ぼくは目から鱗が角膜と一緒に剥がれ落ち、真っ暗な闇に飲まれた気がした。嫌な思い出が喉元にこみ上げてきた。一般人とだけでなく、オタクとですらコミュニケーションできなかったじゃないか、ぼくっていうやつは。

オタクの集まりでの飲み会の際、コミケでコスプレするような美人の女性とお話する希有な機会があった。その中で「xxの作品がストーリーよくていいよね」っていう話題を、ハリウッド脚本術の3幕構成の観点からの考察と、作中モチーフの効果的な印象づけについて語り出してしまったのだ。会話じゃなく、一方的な語り。喋り終わったあと、流石にやらかしたと思った。話し終わった後、相手は口を開いた。

「……ちょうずさん、大学何学部だったんですか?」「え、理工系デスケド……」「え?そうなんですか……?」

どういう意味で尋ねられたかは、よく分からない。

同じ話題でも話し方と方向を考えろ

「お前は話を聞かないからな」「エルシャダイ?懐かしいね」「そういうところがダメなんだ」

同僚は言う。読書だって言っても、今時の流行から純文学、ミステリーSFだって沢山幅がある。食べ物だって、イタリアンから中華、日本食からなんでもある。酒だってそう。蒸留酒趣味からビール趣味、ビール趣味でも普通のビールと、なんか濃くて高いビールがある。 そういうところをきちんと掴んでから、つまり相手の話にきちんと耳を傾けて、相手の守備範囲を理解したうえで、話が合う範囲で自分の話をするんだ。じゃないと、会話のキャッチボールじゃなくて会話のドッジボールになってるだろお前。

「普通のビールはピルスナーで日本で一般的に売られるビール、濃くて高いビールは多分クラフトビールのことだよね」「だからそういう所がダメだって言ってんだよ」

なんとなく分かった。同じジャンルでも、逆カプ*5地雷な人とは会話を気をつける必要がある、って腐女子に習ったから。だから、腐女子は相手の守備範囲と属性を探るのが大切なんだって言っていた。

「おk、今度腐女子に相手の腹の探り方を聞いてみる」「……お前なあ」

秋の夜は更けて行く。赤提灯に集まるおっさんたちは、脈絡のない話をしあって笑い合い、その声は夜の空に吸い込まれて行く。

最後に

創作、ってことにしておいてください。

*1:機動警察パトレイバーの登場人物、後藤隊長の口癖。相手に借りを作ったときに返す言葉。「このお礼はいずれ精神的に」「精神的にお返ししますって」などと用いる

*2:ネットスラングに、歌を歌う人を「歌い手」と言う。これにかけ、何でも「あーわかるわかる」「それな」と共感を示すような相手のことを「わかり手」と呼ぶっぽい。知らんけど。

*3:相手にかける言葉では、「気楽に行こうぜ」っていうのと「ベストを尽くせ」っていうのと、温度感が違うけどぼくは気楽にいきたいのだ

*4:「類は友を呼ぶ」の意。ぼくらは若者だからこういう言葉をつい使ってしまうのだ

*5:同人用語。一般的に広く知られる「受け」と「攻め」が、逆転している場合。逆カップルの意