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立て直せ、人生。

人生行き当たりばったりなアラサーが、無事にアラフィフになれるように頑張らないブログ

「接客業には人生の大切なものが詰まっているんだよ」コンビニバイトの思い出

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留年したとき、コンビニアルバイトを軽い気持ちで始め、存外に面白く長々と続けてしまったという過去がある。

ぼくの働いたコンビニというのは地方都市にあった。薬局と合体していて、大通りに面する。店の前には大きめの病院、近くには大学があった。 ぼくは大学帰りの学生と、仕事上がりのサラリーマンの相手をして過ごした。

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ぼくは比較的歳を食ってから入ったけれど、周りは大学1、2年の子たち。この年頃っていうのは、ほんの数歳違うだけでパワーやノリが全然違うなぁと感じたことを覚えている。

面白い客たち

面白い、と論じたのにはいくつか理由があるが、その一つに客についてだ。よく、団塊世代はサイアクだとかいう言説がまことしやかに囁かれるが、そんなことはない。正確には団塊世代以上がみんなサイアクなのだ。

妖怪ライター投げじじい

レジが混んでくるとき、ホットスナックを揚げたてで!と頼まれることがある。断れないので揚げる。通常は3人シフトであるが、2人のときもあり、そこに地獄は顕現する。

へいおまち!とお待ちのお客様へ商品を手渡していると、休止中のはずのレジの前に70過ぎのじいさんがぽつねんと立ってぼくを睨んでいる。目があうと「いつまで待たせとんのや!」と手に持ったライターを投げつけて、喚きながら店を出て行く。

くじ引きオッサン

また、夜の酔っぱらった女性連れのおっさんもサイアクだ。無駄に横柄な態度で店員に接してくる。700円以上お買い上げの方のためのくじを引かせると、「なんやこれは!ハズレやないかい!全部ハズレなんやろ!!!」とお喚きになるので、暴力沙汰に発展する前に当たりが出るまで、気の済むまでくじを引いてもらったりする。

その間、店員はレジの下の非常ベルにそっと右手を添えてるし、お連れの女性様はスマートフォンに夢中である。

お連れの女性に、どや、と当たりの商品を見せながら足げにお店を立ち去る。

ローションおじさま

薬局と併設していると、自然な成り行きとしてローションをお買い求めになる方も多い。

ある日は、薬局側からエロ本とローションを抱えたオッサンがレジのベルをりんりんりんと鳴らして店員を呼んだ。ぼくは品出し中だったので、ペアの子、可愛らしい年下の女子大生が対応をしてくれたのだけれど、けらけらと笑いながら帰ってくる。

「どったの」

「ローションとエロ本買ったオッサン、xxx出してた」けらけらけら

「まじかーごめんねー」

「っていうか、どんなけ急いでるんだっつーの」

ぼくは、買うところから「プレイ」だったのでは……?という言葉がこみ上げてきたけれど、飲み込んだ。

カンチョーおじさま

サングラスにスーツをキメた、イカしたおじさま。西部警察やろか?ってな感じの風貌、しかしその様子は焦っている。薬局のレジに歩み寄り、こう囁く。

「浣腸は……ないか?」

「申し訳有りません、今の時間、薬剤師が不在ですので……」

「なんで!お金払うって言ってるだろ!」

男は詰め寄り、ぼくは困る。売れないものは売れない。

「あるんだろ?売ればいい、バレやせん」

「申し訳ないですが、売れません」

なんか、薬は薬でも音読みしたくなるブツを売ってくれと絡まれているような気分になる。 暫く押し問答したのち、諦めて帰るのだけれど、ブツブツと文句言いつつチラチラ見てくるのは、風貌と相まって精神的に良くない。

「お疲れ様っス」

一緒のシフトの子♂が声をかけてきた。

「なんでそんなに焦ってたんだろ……浣腸がこんな夜(22時過ぎ)そんなに急ぎに要るなんて……」

「夜だから要るんじゃないです?プレイに要るとか」

品出しを終えたもう一人の子♀が応える。 ぼくがえぇ……と困惑した顔していると、

♂「もしかしたらプレイされる側かもしれない」

♀「確かに」

などと盛り上がっていて、なんだかぼくは少し取り残される。

点滴を携えた土気色のおっさん

よく、病院を抜け出して来る人がいる。上下同じ色、パステルカラーの薄手の病衣を着て、コンビニにやってくる。その日も、ある患者が来た。

自動ドアが開く。いらっしゃいませーと顔を向ける。途中で言葉が切れる。土気色の顔をしたおっさんが一人、立っている。点滴をぶら下げたキャスターを抱えて、自動ドアのレールをまたぐ。背の高いキャスターの中程には四角い機器が備え付けられており、点滴袋から降りた管は機械を通って病衣のなかへ消えている。

おっさんは、店の奥の冷蔵庫コーナーからビールを取り出し、レジに向かう。そしてタバコの銘柄を言ってお金を払う。

そのおっさんの最も特筆すべき点としては、点滴袋をぶら下げたキャスターに備わっている機器が、ピーピーと電子音を上げていることだ。財布に小銭をしまいながら、おっさんは苛立たしげに機械を弄る。どうやらリセットボタンを長押ししたのか、機器は黙り込む。商品を受け取り、また点滴キャスターを抱えて店を出て行く。機械からまた電子音が鳴り響く。

「患者さんここにくるでしょ?タバコとかお酒とか売って欲しくないんだけど」

ナース服を着た女性3人連れ。レジで頼むのは白衣の天使にふさわしいピアニッシモ、タバコである。

「……って言っても、商売だから無理ですよねえ」曖昧に微笑み返す。「うちらが言っても聞かないしねー」中でも一番若そうな女性がスマホを弄りながら言う。「治す気がないっていうかさ」

病院側でも、大なり小なり患者が飲酒喫煙をするのは問題視しているそうだが、やはり完全には防ぎきれないし、昨今患者に対して強く出られないともいう。

「おっさんとかじいさんとか、注意したくないしね」「誰に向かって口聞いてるんだ!ってお前にだよ、って」

ナース服の人たちは、ひとしきりぼくや店長に愚痴ったあと、店を出て行った。

「看護婦さんたちも大変だぁね」店長が呟く。「何かしてあげられることないかな、あの子達可愛いしさ」

ぼくは応える。「患者に物売らなきゃええんでは」「それとこれとは別の話」店長はくるりバックヤードへと足を向ける。

おっさんになりつつある中で。

それから数年して、ぼくも徐々におっさんになりつつある。そんななか、思い出すのが上記のようなおっさんたちだ。

無論、素敵なおっさんたちも沢山いる。ぼくは、これらダークサイドのおっさんたちを反面教師にして、素敵なダンディズム溢れるおっさんになろう、と心に誓うのである。