立て直せ、人生。

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学生時代のつらさと社会人時代のつらさは、何が違うか

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学生生活というものは、まるで終わりの見えないお祭のようなものだ。絶え間なく訪れるイベントは、どれも慣れぬ出来事ばかりで、まるで海辺に打ち寄せる波のように、二度とはおなじものはこない。

どうして社会人になって日々が辛く、だけれども飛ぶように過ぎて行くのか。

缶ハイボール片手に東京の夜景を眺めていたとき、友人が言った。

「つらさってのは、多分2種類くらいあって。慣れぬが故の不安。そして、もう一つが、慣れても残る、純粋なつらさ。たぶん、いまは後者ばかりなんだと思う。」

ぼくは言葉を返す代わりに、缶ビールを飲み干し、ゴミ箱に投げつけた。綺麗な放物線を描いた空きカンは、しかし、情けない音を立ててゴミ箱に跳ね返され、無様に道路に転がった。友人は、それをみてまるで俺らみたいだ、と寂しく笑った。

「大学行って卒業できて就職して……人生が綺麗な放物線を描いたように思っても、"幸せ"とやらに収まるとは限らない」

「幸せへのゴールインをゴミ箱の口に例えるのか?」ぼくが応えると、友人は「かつて憧れた就職という幸せだって、鼻紙みたいなもんだったろうよ」と返した。

そしてぼくらは新しくハイボール缶のプルタブを上げ、「違いない」と言い合い缶を打ち付け合う。

しぜん、結婚についても話題が移る。もうぼくらはいい年なのだ。ぼくらの中にも、つらさから逃れるため、結婚という極楽浄土を目指した者がいた。無事、そいつはその理想郷にたどり着いた。しかし、しばらくぶりに会ったそいつは独り身の頃よりくたびれて映った。

結婚は理想の極楽浄土なのだろうか。ぼくが口にすると、友人は言った。

「結婚が極楽浄土?元より、人は誰しも極楽浄土の住人だよ。だって、親は結婚しているのだから」ごくり、と一口飲んでから、友人は続ける。 「で、やつらは理想郷の住人然としているか?生まれ故郷がどれだけ酷くても、故郷には帰りたくなる。それだけさ」

ぼくはなにも応えなかった。生暖かい風と共に、電車がやかましく通り過ぎて行った。

「学生生活が、終わりの見えないお祭りのようなものなら……結婚や仕事はどうなのだろう?」

ぼくが言ったか、友人が言ったか。ぽっと吐き出されたその言葉は、しばらく宙を漂った。

学生生活と今の生活。何が違うのだろうか。終わりが見えず、忙殺される状況というものには変わりはあるまい?

ぼくらは話し合った。その違いについて。学生生活における忙しさ、つらさは、今感じているものと全く別種のものではないか?と。

学生時代は、目新しいことが次々と目まぐるしく起きて、濃密な時間が流れてゆく。忙しく、追い込まれ、辛い思いをすることもあるが、結果学力や知識、知見として自分のうちに積み上がってゆく。元より自分の選んだ学問の道の一つである。振り返ってみれば、どれも思い出話として美化できるものばかりだ。

翻って、社会人生活はどうだろうか。

入った会社は自分の選んだ道かもしれない。けれど、利害関係に絡みとられ、自分の望まぬ仕事にも手を染めなければならない。望まぬ仕事は毎年繰り返され、忙殺はされど目新しさはなく、感じるのは純粋なつらさのみ。

「学園祭ってあるじゃん。あれ、今の仕事と違ってみんな素人で、先が見えなくて無計画で、手探りで行って喧嘩ばっかりするんだけど。それでも楽しいじゃん。みんな、一丸となって問題を順番に撃破してゆくみたいな感じで。仕事の忙しさって、そういう楽しさってのがなくて。なんでだろうなって思うんだけど、利害関係があるからか、いろんなところを向かなきゃいけないからか、一つの目標に向かってみんなが向かってゆく、ってのがなくてまるで足を引っ張り合ってるみたいになっちゃって、次第に本当に足を引っ張り合うのが目的になっちゃってたりもして……」

一つの方向、目標向かって、みんなが足並み揃えていく……簡単に言えるけど、それが難しくて、星の数ほどチームマネジメント手法が産まれては消えてくんだ。そんな、青臭さ混じりの愚痴をかわして。

「じゃあ、結婚は?」何気なくぼくが口にすると、友人は感を肩をすくめ、缶を飲み干した。そして、空缶をゴミ箱に入れた。今度は放り込まず、確実に入るように手で押し込んで。

友人が彼女との入籍を決めたとの連絡を受け取ったのは、それから数週間後のことであった。ぼくはその連絡を受けたその日、缶ビールを片手に、一人、夜の皇居の周りをゆっくりと歩いた。「どうしてなかなか、娑婆も悪くない」ぼくは一人ごちた。

願わくば、彼の結婚生活が終わりのない学園祭前夜のようでありますように。ぬるくなった缶ビールを掲げてぼくは祈った。

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