救急車がうるさすぎて勘弁してほしい
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救急車がうるさい。
と書くと、いかにもクレーマーと思われてしまいそうだが、うるさいものはうるさく、しんどいのである。
越してきて4年ほど経とうとしているアパートは、築9年ほどで単身者が多く住む。幹線道路、と言っても郊外であるのでさほど交通量は多くなく、日付が変わるとほとんど車を見かけない。
そんな道路沿いに、今年の春過ぎに病院がてきた。救急病院に指定されている。ぼくの家の前の道は、駅前から病院に向けての一本道となった。これが不幸の始まりだった。
「お前、自分が救急車に乗るときのこと考えたら同じこと言えるん?」
そんな言説がネット上では飛び交っているけれども、日がな一日救急車が家の真ん前をサイレン鳴らして通って行く家に住んでみれば、その口を閉ざすんではないか。
実のところ、ぼくも救急車のサイレンに対して憤るようなことになるとは思わなかった。いのちだいじに。人の命と引き換えられるものなんてない。 けれど、家から歩いて3分ほど、200メートル先に病院ができてからぼくの考えは変わらざるを得なかった。
深夜1時、寝付いた頃に救急車が大音量で通る。一度ならいい。多い日は、そんな時間に10分間に4台、5台と通る。せめてもう少し早ければ嬉しいのだが、なぜだかその時間が多いのである。
しんどい。その一言だ。ヤンキーのバイクのブンブンブブブンという下痢みたいな音よりも、走り屋の直管のパアアアアアアン!という音よりも、脳髄を貫いてくる。目が覚めてしまう。助けてほしい。勘弁して。
法律上、90デシベル以上120デシベル以下のサイレンを鳴らす救急車。100デシベルが電車の高架下ほどの騒音というが、そんな音が家の前を何度も何度もなんども通ると気が狂うかと思う。
これはぼくの落ち度もある。調べてみると、市の開発計画にはぼくの引っ越し先の周辺に病院を移転する計画が以前からあったようなのだ。失敗した失敗した失敗した失敗したぼくは失敗した。
こういった経験をすると、保育園の騒音問題の件も他人事と感じられない。そりゃ、社会全体のことを考えれば子供は宝だ、自分だって子供の頃があっただろうに、という話にもなるかもしれないけれど、そんなこと知るか。お前も同じ目に遭ってから言え。
ただ、保育園の方は、実は子供の声は然程問題にならない、という話もあるので、ちょっと騒音問題と同列に語るのはフェアじゃないかも。 子供の声は高い声だから、「きちんと」施工された保育園であれば容易に防音可能だ。きちんと防音された保育園、幼稚園がいかほどあるだろうか、という話はあるけれど。近所の住宅街にある保育園も、横を通るときに大変賑やかな声が響いてくるし。
資産価値の下落だったり、親の送迎の車が渋滞を引き起こしたり路駐したり、ということも問題視される。これは、ぼくの地元でも話題になっていた。
結局の所、日本の場合、住環境の整備が遅れてしまっているからではないだろうかな、と思う。 日本の残念な防寒・防熱仕様のペラい窓だと、音だって貫通してしまう。
防寒断熱については、通称「省エネ法」にて2020年に義務化される。こういう取り組みが色々遅れてしまっているせいで、そこまで問題にならないはずだった物事が問題になってしまうのは、悲しく感じる。
今ぼくは引っ越し先を探している。ただ、一度物件選びに失敗するとものすごい慎重になってしまい、なかなか踏ん切りが付かない。「独り身だし、賃貸だから気軽に引っ越しできるでしょ」って言われることがあるけど、多少なりともお金が飛んでいくし、引っ越しの事務手続きなり荷造りなり、引っ越しなんてそう好き好んでするようなことじゃあない。
「あれ、部長、引っ越しだって言ってたのに仕事してていいんですか?」
「ちょっとぼくが仕事詰まってるからね、妻がやってるよ。引っ越し当日はぼくが動くから、事前の荷造りは任せたーって」
そんな話を聞くと、相手もいないのに同棲ができる物件を探し始めてしまう。そしてまた、選択肢が狭まるのであった。